嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「もう!まだ怒っている訳!?」

「当たり前、何で好きになられてる訳?
……いつ?ってか何で??」


正輝はさっきの山本くんの発言が気に入らなかったらしい。
さっきからずっと機嫌が悪いんだ。
山本くんと別れて、学校から出て、結構経ったのに。
ずっと怒りっぱなし。

でも、手は固く結ばれていて。
それが凄く嬉しかったりするのは秘密だけど。


「……あー……何で……?」

「知らないよ!
ってか冗談なんじゃない?」

「分かってないな和葉は。
嘘だったら俺が見破れない訳ないでしょ?
それに……」

「それに?」


大袈裟に肩を落とす正輝。
軽く私を睨んでいたけれど、すぐに呆れた様に視線を逸らした。


「俺と同じ目でアンタを見てたから」

「同じ目って?」

「……好きな子を見る目」

「……」


正輝の言葉に『ぶっ』と吹きだしてしまう。
だって正輝からそんな言葉が出るとは思わなかったもの。
笑っていれば、正輝の満面な笑顔が私に向けられた。
でも、これは怒っている時にする顔だって私は知っていた。


「ごめっ……」

「許す訳ないでしょ?」」


ギュウッと手を強く握りしめられる。
あまりの痛さに声すら出せずに反対の手で君の腕を叩く。


「反省した?」

「した、痛い」

「ん、ごめんね」


さっきとは打って変った優しい笑顔で私の手を撫でるキミ。
そのギャップに自分でも笑ってしまうくらい虜になっていた。
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