嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「ごめんなさいっ!!」


3人で教室に入った途端、クラスメートたちに頭を下げられる。
驚いていれば次々と皆は口を開いていく。


「俺たち、白石に言われて考えたんだ!」

「自分たちの意思でちゃんと行動しようって」

「誰かに従う人生なんてつまらないしな!」


皆の笑顔はキラキラと輝いていて。
真っ直ぐに私たち3人を見ていた。


「本当にごめんなさい。
3人には酷い事を沢山しました」

「許してくれなんて、簡単には言えないけど。
俺たち変わるから。だから、見ていて欲しいんだ」


頭を下げる皆に私はフゥとタメ息を吐いた。
こういう時に聞きたくなんかないのにな。心の声。
だって、皆の決意を信じたいのに。
頭の中には勝手に声が入ってくるから。


「(許してくれないよね……でも変わってみせる!)」

「(私も強くなりたいんだ!あの3人みたいに!)」


でも。
今はこの力もそんなに悪くないかなって思えるんだ。
だって。

『俺は凄いと思う。
だって人の心の声が聞けるって事は……。
誰かの心に寄り添えるって事でしょ?』

いつだったか正輝が私に言ってくれた言葉。
あの時は意味が分からなかったけれど。
今なら分かる。

誰かが悩んでいる時や困っている時。
私は1番にその人の心の中を見る事が出来る。
例え、その人が望んでいなくても、お節介でも。
その人の力になりたいって。
誰かと誰かの架け橋になりたいんだって、そう思ったんだ。


「……ごめん!」

「え……」


私が謝ると皆は哀しそうに顔を歪めた。
言葉足らずだと気が付いたのはその数秒後。
すぐに首を横に振って言葉を付け足す。
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