嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「皆は本気でそう想ってくれている。
それを真っ直ぐに信じたいけど……。
勝手に心の声が入ってきて、皆の本心を聞いちゃうんだ。
だから……こんな言葉は可笑しいと思うけど……」


ぎゅっと唇を噛みしめて俯いた。
でも背中に触れた2つの手のひらが勇気をくれる。
そっと振り返ればそこには笑顔の正輝と山本くんがいた。
もう、迷う事なんてなかった。


「本音を口に出してくれてありがとう!」


真っ直ぐに皆を見て言葉を放った。
一瞬だけ驚いた皆の顔。
でも、すぐに目を細めてくれる。


「ああ!」

「ってか心の声が聞こえるって凄くない!?」

「うん!1回やってみたい!」

「でも、聞きたくない声を聞くって辛いよね……」

「白石!今までごめんな、嫌なモノいっぱい聞かせちまって」


皆は哀しそうに顔を歪めて、もう1度謝ってくれた。
そんな必要はないのに。
だって。


「私こそ勝手に聞いてごめん……」

「お前は悪くないだろ!?」

「そうだよ!!」


皆は優しく笑うと私たちを教室へと迎え入れてくれた。
ワイワイと騒ぎながら席へと向かう。

今まで大嫌いだったはずの教室。
醜い声ばかりが響いていたこの空間は。
とても温かくて、優しい場所に変わった。

その瞬間、ガラリと前の扉が開いて、誰かが入ってくる。
さっきまでいなかった加藤くんだ。
皆は息を呑むけれど、すぐに目を見開いた。
それは私も例外ではない。だって。
昨日までふさふさに生えていたはずの髪の毛がどこにも見当たらなかったから。
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