嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「……な、何見てんだよ!!」


教室に入った瞬間に皆からの注目を浴びた加藤くんは顔を紅めていた。
いきなり坊主姿になった加藤くん。
皆は戸惑いが隠せていなかった。
私も呆然と見つめていればふいに目が合う。


「(あー緊張する……)」


彼の心の声が聞こえていた。
頭の中に響いたその声は不安そうで。
それでも、何かを決意した様に真剣な目をしていた。


「白石!一ノ瀬!山本!」


ビクッと肩が揺れた。
いきなり出た名前に目を丸めていれば怒鳴り声が響いた。


「ちょっと来い!!」


私と正輝は顔を合わせる。
状況がよく分からなくて。
首を傾げるけれど後ろから肩を叩かれた。


「何か呼ばれてるぞ、俺ら」


苦笑いを浮かべて小声で喋るのは山本くんだった。


「何で!?」

「仕返しとか?アンタ昨日あの人に恥かかせていたし」

「あーあれは酷かったよな。
皆に嫌われているとか、包み隠さずに話し出してたし」

「そ、それは……!」

「早く来い!!」


3人でひそひそと密談をしていれば、またもや叫び声が聞こえてくる。
仕方なく前に出て行けば教壇に上がっていた加藤くんが私たちを見下ろした。
坊主へと変わって迫力を増していた。
いかにもヤンキーみたいで、怖くなっている気がする。
でも、次の瞬間、驚く光景が目に映った。


「えっと……」

「……」

「……」


私たち3人だけじゃない。
クラスの全員が目を見開いていた。
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