嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「そーだ、そーだ!」

「土下座なんてしても許さないし!」

「ってかさー皆を苦しめてたのに坊主程度で反省したとは言えないんじゃない?」

「(ってか消えろよ)」

「(ウザい)」


耳に聞こえてくる声と、頭の中に響いてくる声。

その2つが交じり合って。
私の心の中を切り刻んでいく。

結局私がした事は。
このクラスの仲を変に団結させただけだった。

加藤くんを悪者にして。
他の皆だけが仲良くなったって。
そんなの、やっぱりおかしい。

頭ではそう思っているのに自分が作ってしまったこの状況をどうすればいいかなんて分からなかった。

震えだす体を自分で抱きしめていればフワリと頭の上に手がのった。


「大丈夫、俺が何とかするから」


耳元で小さな声が囁かれた。
それと同時に正輝はスタスタと加藤くんの所へと行く。
加藤くんは未だ土下座をしていたから表情は分からない。
だけど、体は小刻みに震えていたんだ。
こんなにクラスメートから罵声を浴びせられて平気な訳がない。
ぎゅっと唇を結んでキミの背中を見つめた。

お願い正輝。
加藤くんを助けてあげて。

それが届いたかの様にキミは『ふっ』と鼻で笑ったんだ。


「あのさー……その土下座は俺たち3人に向けてだよね?」

「……ああ」


震えた加藤くんの声。
正輝はそんな事お構いなしに話し出す。


「アンタが謝るべき人は俺たちじゃなくてクラスの人たちなんじゃないの?」

「それは……」

「まあ、今まで仲間面してきた人が心の中では自分を嫌っていたって知ったらさ……。
傷つくよね、そこに理由があったとしても、例え自分が悪くてもさ」


正輝の言葉には重みがあった。
きっとお兄さんの事を言っているのだろう。
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