嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「あのさ……」

「え?」


皆の方を向いてポツリと呟いた。
ただ、今の気持ちを伝えておきたかった。
心の声が聞こえる私だからこそ、出来る事をしたかったんだ。


「人は1度間違いを犯したらもうそこでお終いなの?
アイツは悪い奴だってレッテルを張られて一生、後ろ指を指されて生きていかないといけないの?」


私の声は今にも消えてしまいそうな儚いモノだった。
でも、静かすぎるこの空間には十分だった。


「私は違うと思う。何度間違えたっていい。
間違いに気が付けば、誰だってやり直す事が出来る。
そりゃあ、ゲームじゃないし、リセットは出来ない。
それなりの勇気や覚悟は必要だし、周りの協力だって必要だと思う。
思う所は色々あるかもしれない。
だけど、受け入れる事だって、大切だと思う」


言い終わった瞬間にペコリと頭を下げた。


「好き勝手言ってごめん!」


それだけ言って席に戻ろうとしたらパシリと腕が掴まれた。


「本当に悪かった」


手を掴んだのは加藤くんだ。


「だから……私は……」

「違う……化け物って言って……」

「……」


その言葉に俯きかけたけど、にっと笑顔を浮かべた。


「本当の事だから仕方ないよ。私だって分かってるから」

「違う……お前は化け物なんかじゃない……。
化け物は俺の方だった」

「え?」

「平気で人を傷つけて、それを楽しんでた。
怖がる奴らの顔を見て面白がってた。
……皆……本当にごめんなさい」


頭を下げた加藤くんに4人の男の子が近付いてきた。
いつも彼と一緒にいた人たちだった。
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