嘘つきの世界で、たったひとつの希望。

「確かにお前の事は怖かったけど……。
友達には変わりねぇもんな」

「そうそう。でもこれからは、ちゃんと反撃するからな！」

「お前の言いなりにはならねぇよ！」

「逆にお前が逃げ出すなよ！」


4人の男子は笑いながら加藤くんを囲んでいた。
今までの友情は偽りだったかもしれない。
だけど、偽りが本物に変わる事だってあるんだ。


「……ありがとうっ……」


加藤くんの掠れた声を聞いた瞬間、私の顔にも笑顔が浮かんだ。


「良かったね！」

「ああ、白石や一ノ瀬のお蔭だ」


にっと笑って親指を立てる。
加藤くんも小さく笑って私と同じポーズをしてくれた。

他の人はまだ心に蟠りを抱えたままだった。
だけど、それでいいんだ。

本物の絆が芽生えるのには時間が掛かる。
ゆっくりだっていい、少しずつだって。
一緒にいて、分かり合えばいいんだ。

このクラスはきっと、いいクラスになる。


「さてっ……サボりに行こうかな」

「っておい！」

「ははっ！じゃあねー」


加藤くんの言葉を背中に聞きながらユラユラと手を振る。


「早く行こう」

「うん」


当たり前の様に一緒にサボろうとするキミ。
それを当たり前の様に受け入れる私。

そんな光景を見ながら皆はきっと呆れているだろう。
だけど、それでいいんだ。


「白石、一ノ瀬」


教室から出ようとすれば山本くんに呼び止められる。
振り返れば、彼は満面な笑みを浮かべていた。


「お前らは化け物なんかじゃないよ！
……世界1心が綺麗な奴だ！」


油断をしていた。
そんな事を言われるとは思ってもいなかった。
だから、目の奥が一気に熱くなっていく。


「もし！お前らを化け物と呼ぶ奴がいたら俺が懲らしめてやる！」

「おう！手伝うぜ！加藤！」

「よしっ！やるぞ山本！」


何故か急に仲良くなりだした加藤くんと山本くんを見ながらふっと頬を緩めた。
ぎゅっと唇を結んで、そのまま引き上げる。


「その時はヨロシク」

「おう！任せとけ！」


同時に言い放つ山本くんたちに背を向けて教室を出た。