嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「そんなの私だって……」

「あ!」


私の言葉を遮ってキミは声を上げる。
絶対にワザとだろう、そう思うタイミング。
本当にマイペースな人。
だけどそんなキミに私は惚れたんだ。


「どうしたの?」

「そう言えばアンタに聞いてない」

「何を?」

「告白の答え」


唐突に何を言うかと思ったら……。
一気に顔が熱くなっていく。
こんなに冷たい風が吹いているのに。
ちっとも冷めて何てくれなかった。


「……あれを告白だと認めません」

「人の命がけの告白なのに」

「大体ね……命かけられた告白なんて……」


言いかけて頭を抱えた。
正輝と話していても水掛け論になるだけだ。
だって私もキミも1歩も引かないから。

盛大にタメ息を吐いてキミを見つめた。


「さっき山本くんが言ってたでしょ?
……ベタ惚れだって……」

「うん」

「あーもう!」


嘘を見破れるくせに変な所で鈍感なんだから。


「私が惚れてるのは正輝だよ。
キミしか目に映ってない、ずっと」


言った瞬間に顔が爆発するかと思った。
でも、何でだろう。心は軽いんだ、凄く。


「……俺の事好き?」

「……好きだよ」

「……俺は好きじゃない」

「は!?」


正輝の言葉に思わず絶叫をしてしまう。
嘘だと思いたかったけれど、正輝が苦しむ事はなかった。
と、言う事は本当だって事だから……。
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