嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「『和葉と一緒のクラスじゃないと死んじゃうかも』」

「……は?」

「そうやって頼んどいたから大丈夫。
学校側としても死人は出したくないだろうし」


ケラケラと笑う正輝を見ながら固まってしまう。

驚いたというか。
何というか。

開いた口が塞がらなかった。

死んじゃうかも、なんて誰だってそう口にする事はある。
それを真に受ける事はそうそうないけれど。

キミの場合はそういう訳にもいかないんだ。


「私ってさ……」

「ん?」

「もしかして厄介な人に恋をした?」

「……今更分かったの?」


ニヤリと笑うキミ。
私の頬を引き寄せて自分の方へと近付けた。


「でも、もう遅いよ」


唇が触れそうな距離で見つめ合う。
恥ずかしくて目を逸らしたくなるけれど。
真っ直ぐにキミを見つめた。


「絶対に逃がしてあげないんだから」


にっと笑ってそのまま唇を重ねられる。
柔らかいその感触に目を閉じてキミを想った。


「逃げる訳ないでしょ?」

「分からないよ。俺は厄介な人間だから」

「それはお互い様」

「そうだね」


2人で笑い合ってもう1度だけ唇を重ねた。
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