嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
眩しいくらいの光が私に降り注いでくる。
心はいつも暗闇にいるのに、この時だけは晴れやかに輝いているんだ。
いつもこうだったらな、と思いながら目を細めた。


「ご飯食べた後に寝ると太るよ」


デリカシーのない言葉をなんの躊躇もなく言い放つのはアイツしかいない。
顔だけをそっちに向ければ呆れた顔の正輝が立っていた。
手にはジュースのペットボトルが2本。
その1本を私のお腹めがけて落す。


「うっ!!」


軽く投げてくれた様だけど、結構な衝撃だ。
痛がる私を見てケラケラと笑う正輝。
若干、イラッとくるけれど気が付けば私も一緒になって笑っていた。

今は5限目が始まって数分が経った頃だろう。
私と正輝は昨日、怒られたばかりだというのに懲りずにサボっていた。
勿論、屋上で。
2人だけの静かな空間は驚くくらい落ち着いて。
ずっとココにいたいと思うくらいだ。


「あっ!お金払ってない」


ジュースを買って来て貰って払い忘れる所だった。


「いらないよ、俺の奢り」

「駄目だよそんなの!」


ブンブンと首を横に振ってポケットに手を突っ込む。
中から出てきたのは水色の小さな小銭入れ。
そこから100円玉を1枚取り出して正輝に突き出した。


「買って来てくれてありがとう!」

「律儀だな……奢りだって言ってるのに」

「じゃあ正輝が稼ぐようになったら奢ってよ」


冗談半分に言えば正輝はケラケラと笑いながら頷いた。
そこまで笑う事を言っただろうか?
そう思い首を傾げれば正輝はニヤリと唇を引き上げる。


「それまでずっと俺の傍にいてくれるんだ」

「っ!!」


一気に紅くなる顔。
別にそんな意味で言った訳じゃない。
それは正輝も分かっているはずだ。
だって、からかう様に私を見ているんだもん。
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