嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「っで?」

「え?」


2人でジュースを飲みながら話していれば急に正輝が問いかけてくる。
何の話か全く分からなくて、首を傾げれば正輝は小さくタメ息を吐いた。


「アンタ、朝から少し様子がおかしいけど」

「おかしいって……」


何の事だろう。
そう思って考えるけれど、何も浮かんでは来なかった。
考える事を諦めて更に首を傾げる。


「俺の勘違い?
アンタ、授業中ずっと怖い顔していたけど」

「怖い顔って……」


苦笑いを浮かべたけれど、すぐにハッとした様に目を見開く。
もしかして昨日のお父さんとの約束の事だろうか。
学年順位10位以内っていう……。
別に意識をしていた訳ではないけれど、どうやら顔に出ていたらしい。


「心当たりあるんだ」

「ま、まあ……」

「なに」


なにって……。
最初は言わないつもりだったけれど。
正輝の無言の圧力に負けて口を開いた。


「……ふーん、10位以内ね……」


何でもない様な顔をする正輝。
何か余裕そう。
少しムカついて意地悪をしてやろうと心の中で笑う。


「この学校のテスト結構難しいんだよ!
……レベル高いし!」


実際、難しいし、嘘ではないだろう。
そう思っていれば正輝はまたもや『ふーん』と興味なさそうに言う。
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