嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「余裕そうだね」

「別に」


テストの話題なんて誰でも嫌がるのに。
正輝はケロッとしていた。
頭いい人はこんな反応をしそうだけど、もしかして正輝って。


「頭いいの?」

「まあ、いいんじゃない?」

「うそ!?
サボり癖があるくせに!?」

「それは和葉もじゃん」

「だから私は頭良くないって!」


言い争いながら『んー』と考え込む。
授業中の正輝を思い出しても頭いいとは結びつかないんだけど。
だって、よく寝ているし。


「前の学校での順位は!?」

「んー」


声に出す事なく人差し指を立てる正輝。


「1?……1位って事!?」

「うん」


信じられない。
あんなに授業態度が悪いこの男が1位なんて。
驚きながら確認を取る。


「クラス順位?」


クラス順位でも凄い事だろうけど。
いくらなんでも学年1位は……。
そう思っていれば正輝は首を横に振った。


「学年だけど」

「……」


サラリという正輝に返す言葉がなくて黙り込む。
まあ、黙り込むというより声が出せないと言った方が正しいけれど。
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