嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「……40問中10問の正解」

「あ、あはは」


頑張って20問くらいは埋めたんだけど。
その半分しか正解じゃないって。
自分の馬鹿さ加減に呆れていれば正輝は何かを考える様に目を閉じていた。
キミも呆れているのだろうか。
沈黙が怖くなって無理やり明るい声を作る。


「正輝の言う通り時間の無駄だったね」

「……さっきの気にしてるの?」

「え?べ、別に……本当の事だし……」


分からないまま時間だけが過ぎて行った。
私なりに頑張ったつもりだけど、結果が伴っていないのだから意味がないだろう。
そう思っていればキミは大袈裟にタメ息を吐く。


「本当の事だよ。
アンタが俺の事を起こせばもっと有意義な時間の使い方も出来たし」

「そ、その通りです」

「でも、アンタは俺の事を想ってくれたんでしょ」

「え?」

「眠ってる俺を起こすのは可哀想とか」


何で分かったんだ。
まさに図星だが、口に出す訳にもいかず首を横に振る。
本当の事だけどそれはいい訳にしかならないんだもん。


「そんな事……」

「はい、嘘」

「……」


思わず黙り込む私。
キミは呆れた様に肩を落とすと私から視線を外した。
そして、窓の外を見ると小さく言葉を放つ。


「言ったでしょ。
嘘をついているかついていないかくらい分かるって」

「……ごめん……」

「別にいいよ、気にしていないし」

「ありがとう」

お礼を言えば、キミは私の方を向いて少しだけ笑ってくれる。
その笑顔にホッとして私も笑った。
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