嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「終わったー」

「お疲れ」


伸びをしていれば隣から優しい声が聞こえてくる。
そっちを向けば既に勉強を終えた正輝が目に映った。


「お疲れ様!」


キミに笑顔を向ければ優しく目が細められる。
格好良いな、そう思いながら笑っていればキミの顔は意地悪な笑みに変わっていた。


「勉強しすぎておかしくなったんじゃない?」

「酷いなー」


ワザといじけた様に机に俯せる。
勿論、キミにはバレバレだと思うけれど。
でもそんな私に呆れる事もなく笑っていた。


「拗ねないの」


頭にのった大きな手のひらは、ゆっくりと左右に動く。


「気持ち良い……」

「寝ないでよ?」

「……うん」

「こら、言ってる傍から寝ないの」


首根っこを掴まれて無理やり起こされる。
いきなりだった為、バランスを崩してキミの胸板に寄り掛かってしまう。
だけど、眠たくて頭が働かない。


「んー?眠いよ……」

「ね、眠いとか知らないし!」


体を揺らされるけれど眠気が覚めない。
正輝の体は温かくて余計に瞼が重たくなっていく。
只でさえ嫌いな勉強をした後だ。
眠たくならない訳がないんだ。


「……」


しかもいい香りがするし。
爽やかな柑橘系の香りに包まれながら目を瞑った。
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