嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「ふーん」


言葉は興味なさそうだけど顔は満面な笑みへと変わっていた。
今のやり取りでキミが喜ぶ事があっただろうか?
よく分からないけれど正輝が笑顔になってよかった。


「本当にごめんね?」

「別に?
でも約束だからね」

「え?」

「俺の前でしか寝ないでよ」

「う、うん」


戸惑いながらも頷けば満足そうに笑うキミ。
ついていけずに首を傾げるけれど正輝はそんな私に目もくれない。


「じゃあ帰ろう」


そう言ってキミは歩き出した。
でもさっきと違うのは。


「……」


チラリと視線を下にやればガッシリと繋がれた手。
それは勿論、私と正輝の手で。
当たり前の様に繋がれた事が嬉しかった。

家が隣だと分かってから一緒に登下校をする様になった私たち。
隣にいれば自然にこうやって手を繋ぐようになったんだ。

さっきは怒っていたから繋いでいなかったけれど。
だから余計に嬉しいんだ。

ギュッと手に力を籠めれば何も言わずにキミも同じ様に強く握り返してくれる。


「正輝」

「ん?」

「何でもない!」

「何それ」


顔を見合わせながら笑って歩き続ける。
キミと2人で。
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