【短編】ヒミツの関係
4
長い沈黙に息が詰まりそうだった。
何も言えずに俯いた俺の目の先には、こいつの鞄が置いてある。
「…菜…穂……」
「っえ…!?知ってたんですか…?」
「…まぁ…偶々……?」
俺は前から知ってたかのように嘘をついた。
本当はたった今、鞄に書いてある名前に気付いただけなのに。
「…嬉しいです!偶々でも先輩が知っててくれてたなんて……」
そう言って笑った菜穂は、ちょっとだけ可愛いと思った。
「お前は、笑ってた方がいいよ。」
「え?」
「泣いてるとブスだし。」
「…ひどっ……」
―――チュッ……
頬を膨らまして喋る菜穂を黙らせるためにキスをした。
ゆっくり唇を離してみると、菜穂は目を見開きながら硬直している…。
「ぷっ…!なにその顔?ていうか目くらい閉じろや!」
って感じで、俺はずっと笑いが止まらずにいた。
菜穂を見ると、硬直したまま顔だけが見る見るうちに赤くなっていく……。
「…やめてください……。本気にしちゃうから…//」