【短編】ヒミツの関係
5
「あぁ〜…そりゃ困る。俺はお前の事嫌いじゃねーけど、好きでもねーし…。キスしたのは、お前がデカイ声出したから。」
一瞬、時が止まる…。
でもこれが俺の本心だった。
「それは…、私がどんなに頑張っても、変わる事ないですか……?」
さっきとは一転して深刻そうな顔で聞いてきた菜穂に、俺は冷たく「ない」とだけ返事した。
「………それでも、私は先輩の傍にいたい…です。」
「…いいよ。」
「ええっ!?いいんですか!!?」
「うん…。気が変わった…。その代わり、俺の気持ちがお前に向くことは絶対ないよ?」
「それでもいいんです…。先輩と一緒に居られるなら…………」
―――この日を境に、俺達の関係は始まった…。
こんな体だけの関係が、気が付けばもう半年も続いている…。
最初は一緒にいても何をするわけでもなく、ただゲームをしたり、菜穂の話しを聞いてたりしただけだった。
でも、密室に2人きりの空間に俺が耐えられるはずもなく、いつの間にか人には言えないような関係になっていた。
絶対人を好きになる事はない。
そう思っていた俺の気持ちは音をたてて崩れだす…。
この気持ちに気付くのは遅すぎた…。
だって俺は取り返しのつかない事をしてしまったから………。
でも、どうか最後にもう一度だけ………。