蒼き華に龍の口付けを
少し時間が経ち、ラウリは玄関で様子を探っていた。
やがて、足音が遠ざかって行くのを確認し、迷い家に視線を向ける。

彼女はまだ怒っていて、ちゃぶ台に頬杖をつき、顔を背けている。
ラウリは軽く溜め息をつき、迷い家の所へ行き、頭を慣れない手つきで撫でる。

「お前に強引な事してしまってすまない。蒼華と二人っきりなんぞ解し難いと思って……」

顔を上げた迷い家が見たのは申し訳ない表情をしたラウリだった。こんな顔を見る事は中々無い。

迷い家はそっと立ち上がり、ラウリの頭を優しく撫でる。
これは『理解したよ、許すよ』と言う合図だ。

「そうか、赦してくれるのか。感謝する」

頭を垂れ、お礼を告げる。ラウリにとって迷い家は妹であり、母親の様な存在だ。
普段は構いたがり屋なのに、こう言った時はとてつもない包容力を発揮する。蒼華とは別に大切な家族だ。
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