蒼き華に龍の口付けを
「目を覚ましたみたいだな」

低く、はっきりとした男性の声が頭から降り掛かる。それに驚き私は振り返った。

驚いた。
そこに居たのは、長い白髪の男性だった。怪我をしているのか分からないけど、左目は髪の毛で隠されている。
この人を同じ人間と呼べるのかと訊かれたら、イエスとは言えない位整った顔をしている。
それに拍車をかけるかの如く硝子の様に綺麗な空色の瞳が透明感と言うか、浄化と言えば良いのか、言葉に出来ない『それ』を感じさせる―――。

「だ、誰なの?」

いけない。人並み外れた容姿に見とれている場合ではない。警戒は解かないでおこう。

「それはこっちが訊きたい。お前は誰だ?」

「……蒼華(アオカ)」

「丁寧に答えて貰い感謝する。俺は羅宇利(ラウリ)」

考えが読めない人だわ。睨み返されたかと思ったら急に真顔になって。

「お前は道で倒れていた」

「!!」
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