蒼き華に龍の口付けを
この状況、どうしよう。困った……。その時、ラウリが戻ってきた。

「ラッ、ラウリ、この女性は誰? 私達以外居ない筈なのに……急に……」

ラウリはあの女性を一瞥し、納得した表情を見せる。だけど、すぐに微妙な表情に変わった。

「どうした? 漬物の試食でもして欲しいのか?」

あたふたしている私を差し置いて女性に問いかける。

女性は問いかけに首を横に振った。ラウリはまた、納得した表情で私を見る。

私が疑問を言いかけたのを遮り、ラウリは口を開く。

「お前に紹介する。こいつは『迷い家(マヨイガ)』。この家に居る付喪神の代表であり、飯を作って貰っている者だ」

「!?」

衝撃的な発言に私は耳を疑った。箪笥が付喪神なのは分かったけど、他にも居るの!? 思わず『迷い家』を見る。しかし、何を勘違いしたのか顔を赤らめ、顔を隠した。

「あまりジロジロ見ない方が良い。恥ずかしがり屋なんだ」

「ひゃい……」舌を噛んでしまった。どう反応すれば良いのだろう。

私の様子を見兼ねてか、ラウリ話し始めた。

「迷い家は知っているか?」

「分からない」

「説明する」

分からない私の為、ラウリは説明を始めた。

どうやら迷い家、とは東北、関東に伝わる伝承の一つらしく、山中にある幻の家で滅多に会うことは無い場所。
そこは無人だけど、少し前まで人が居た様な状態になっている。

その中にある物を持って帰ると幸福が訪れるらしい。さらに幸福を求めて迷い家を探すと幸福は消えてしまう。

「でも、ここで商売をしているのなら幻の家じゃないと思うけど」

「ここは妖の世界だ。お前が居た所では幻でも妖では普通にいる家の付喪神だが」

ポンポンと迷い家の頭を撫でる。彼女はとても嬉しそうに見える。
この子可愛い。私より年上だけど。

迷い家は何かを思い出したかの如くちゃぶ台の下から小皿を取り出した。
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