おためしシンデレラ


いつもの三村とは違う。
皮肉も、揶揄うような素振りも、少しもない。

三村の手で頭の先から爪先まで洗われ、バスタオルに包まれてベッドまで運ばれた。三村が濡れたものを着替えに行くのか莉子から離れようとするのを腕に縋って止めた。

身体の震えは止まったけれど、一人になるのは怖かった。

三村が莉子の濡れた髪をかきあげるように頭を撫でる。

「濡れたの着替えてドライヤー取ってくるだけや、すぐ戻る」

ほんの数分でTシャツとハーフパンツ姿の三村が戻り、莉子の髪をドライヤーで乾かしてくれた。

「・・・・・社長の髪も・・・・・」


三村の首にかけられたタオルで髪を拭こうと身体を少し寄せると三村が莉子の背中に両腕を回した。



「マメ、オレは怖くないか?」


耳元で囁く声に心が震える。
少し身体を離して、泣き笑いのような表情を浮かべて莉子が首を縦に振った。



ゆっくりと三村の顔が近付いてきて、唇がそっと重なる。




全て初期化してしまって。
上書きして。

わたしの身体に初めて触れるのは三村だーーーーそう莉子は自分に言い聞かせる。


ごめんなさい、
利用してしまって。


ごめんなさい、
煩わせてしまって。



何度も何度も心の中で謝りながら莉子は全てを三村に委ねたーーーー。
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