おためしシンデレラ
莉子の心が少し怯む。
休みたい、でもそれはダメだ。
これ以上莉子は狡い女になりたくなかった。
自分の傷を埋めるために三村のことを利用してしまった。
三村の優しさにつけ込んでしまった。
社長室で朝の日課をこなしていると、聞き慣れた足音がする。
ああーーー・・・・・。
今日のご機嫌はMAXで悪い。
当然だ。
散々泣きついて、迷惑をかけて、挨拶もなしに消えて、その上電話をスルーとか。
ドアが開くと同時に莉子が深々と頭を下げた。三村の足音が近付き、下を向いた莉子の視界に手入れの行き届いた靴の爪先が入る。
「マメ!」
怒鳴られて身体が竦み、叱責に耐える準備をした。
なのに
三村の香りがして、頭をかかえこむようにして三村の胸に押し付けられる。
「心配させるな、阿呆」
はぁー・・・・・っと莉子の頭の上で深い溜息が落とされた。
「身体は?どうもないか?」
三村が視線を莉子の首元に向けるけれど、そこはガーゼで覆っているし、今日はスタンドカラーのブラウスを着ているから分からないはずだ。