おためしシンデレラ


莉子の心が少し怯む。

休みたい、でもそれはダメだ。
これ以上莉子は狡い女になりたくなかった。

自分の傷を埋めるために三村のことを利用してしまった。

三村の優しさにつけ込んでしまった。



社長室で朝の日課をこなしていると、聞き慣れた足音がする。

ああーーー・・・・・。

今日のご機嫌はMAXで悪い。

当然だ。

散々泣きついて、迷惑をかけて、挨拶もなしに消えて、その上電話をスルーとか。

ドアが開くと同時に莉子が深々と頭を下げた。三村の足音が近付き、下を向いた莉子の視界に手入れの行き届いた靴の爪先が入る。

「マメ!」

怒鳴られて身体が竦み、叱責に耐える準備をした。


なのに


三村の香りがして、頭をかかえこむようにして三村の胸に押し付けられる。


「心配させるな、阿呆」


はぁー・・・・・っと莉子の頭の上で深い溜息が落とされた。


「身体は?どうもないか?」

三村が視線を莉子の首元に向けるけれど、そこはガーゼで覆っているし、今日はスタンドカラーのブラウスを着ているから分からないはずだ。
< 111 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop