おためしシンデレラ


仕事が終わった静かな重役室が並ぶフロアの、秘書課の部屋。莉子は社長の専任なので、社長室の隣の部屋に控えていることが多いけれど、その他の秘書たちはこの部屋にデスクがある。他の課と変わらない風景だ。



「なんや、豆ちゃんは結婚したいんか」




課長と莉子と2人きりの部屋に突然響く声。


「常務、まだいてはったんですか?」

「いや、携帯を忘れて取りに戻った」


常務は有名な仲人好きだ。

会社をリタイアしたら本気で職業にしようとしているらしいという噂がまことしやかに流れている。

「豆ちゃんにぴったりのヤツがおる」

そう言いながら手帳を出して何やら調べ始めた。

「あ、あの常務・・・・・?お気持ちだけで・・・・・」

「うん、ちょうど日もええ。来週の日曜日は空けておきなさい。会う場所と時間はまた連絡しよう」

「え!?あの常務!?」

人の話を聞かない常務はそのまま手を上げて行ってしまった。

課長は面白そうに見ている。

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