おためしシンデレラ


あの男の痕跡を全部消してやりたかった。

その身体に初めて触れるのは三村だと刷り込んでやりたかった。


今までに、あんな丁寧に、大切に、労わって、まるで繊細なガラス細工を触るように抱いた女なんていなかった。



白く、柔らかい身体が、

泣きながら縋る莉子が、愛しくて仕方が無かった。



たった5日ほど留守にしていただけだ。
なのになんでこんなことになる?

「説明しろ、穂村」

「何を?」

「なんでマメが退職したかだ」

「だから結婚が決まって関西を出るって」

穂村がさらりと答える。

月末付で退職するという莉子は、借上げ社宅もとっくに出て、携帯の番号もメアドも変えて誰も連絡がつかない。

「書類とかは全部揃っているのか?」

「準備万端、抜かりなし。なんかあったら前住所に送ってください、1年は転送してくれるからって」

「郵便局に聞いたら・・・・・」

「和生、日本には今個人情報保護法って便利な法律があるんだよね」
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