おためしシンデレラ
なんで穂村はほいほい退職を許したんだと三村は腹立たしいことこの上ない。
タイから帰国した翌日、三村は自分のデスクの上に置かれた封筒を見つけた。
開けてみると莉子が作成した社内保育所と病児保育開設の社内会議用の資料と、ただ一言『お世話になりました』と書かれた手紙。
莉子のデスクには真歩にあてて『よろしくお願いします』という手紙と仕事の流れを纏めたノートが1冊。
「莉子さん、相当几帳面ですねー、ボス、莉子さんいなくて大丈夫?」
ノートをパラパラ捲りながら真歩が呟く。
大丈夫やない。
結婚だ?ふざけんな。
同居を解消してから、真歩が入ったこともあり三村が莉子とゆっくり話せる時間が無かった。
意識的に避けられていたといっても過言ではない。
あの夜を思い出したくない、という莉子の気持ちも分かるから敢えてそれを責めなかった。
みるみる痩せて、顔色が悪くなる莉子を心療内科にでも連れて行った方が良いのではないかと内心思っていた。