おためしシンデレラ


莉子は初めて診て貰った病院に通っている。出産までお世話になるつもりだ。

「産むことを決心したことは偉いけどシングルは大変よ?」

先生に釘を刺される。

「どうしようもなくなったら実家を頼りますから」

「そうね、そう出来るならそれがええわね。あとね、赤ちゃんは順調やけど悪阻がこれ以上酷くなるようなら入院も考えた方がいい」


入院か・・・・・。



エコーで赤ちゃんの心臓がパクパク動くのを見た。

確かに生きてる。

可愛い。



支払いを済ませた莉子は病院を出て散歩がてら歩いていく。

日差しが眩しい。

食べられず、弱った身体に少し厳しい。


いつの間にか鴨川まで歩いていた。

夏の日差しに川面がキラキラ光る。

親子連れが川縁で遊んでいる。

莉子はベンチに座り、それをぼんやり眺めていた。

幸せな風景。

あと何年かしたら、莉子の子供もあんなふうにはしゃいで、楽しそうに遊ぶのだろうか。


涙脆くなったのは妊娠してホルモンバランスが崩れているからだ。
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