おためしシンデレラ


これは行き場のない、昇華できなかった想いが見せる夢。

起きてしまえば大丈夫。
起きてしまえばもう夢は見ない。


ゆっくりと目を開けると、消毒薬の匂いと白い天井。吊られた点滴のパックから伸びた管は莉子の右手に繋がれていた。

どこにいるのかはっきり認識できない莉子の意識が現実と夢の間をゆらゆらと揺れる。



耳が聞き慣れた足音を拾った。



ああ、ダメだ。

最上級に機嫌が悪い。

どうせ夢で見るならご機嫌な三村を見たかったのに。





ベージュのカーテンが乱暴に開けられる。
息せき切った三村が莉子を見下ろした。
いい夢だなと莉子が思う。

「マメ!!」

久しぶりに聞く三村だけが呼ぶ莉子の名前。


触れられたらいいのに・・・・・。


夢なら触れるくらい許される?


三村の大きな手が伸びてきて、莉子の頬を包んだ。


やっぱり夢だ。


現実の三村がこんなふうに愛しそうに触れてくれるわけない。

三村の手に自分の手を重ねてみる。

視界が揺れた。
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