おためしシンデレラ
目の前の全てが滲み出す。
瞳に張った膜が決壊して溢れた。
いつの間にこんな恋しく思うようになったのだろう。
弱った身体と心を憐れんでくれた神様が少しだけくれたプレゼントかも。
目を閉じてその大きな手と、愛しい温度を堪能する。
ずっと醒めない夢なら良いのにーーー。
「マメ、起きろ」
「・・・・・嫌や、起きたら・・・・・もう社長に会えへん・・・・」
「どアホ!!」
怒鳴られると同時に頬を左右に引っ張られた。
「い、いひゃい・・・・」
「人のことを夢オチにすんな!」
莉子の潤んだ目が目一杯見開かれる。
「勝手に仕事を辞めてお前は何を考えてるんや!!退職は認めへんて言うたはずやぞ!」
莉子はまだ状況が飲み込めずにいた。
なんで?
ここはどこ?
「和生、うるさい!病院で怒鳴るな!」
後ろから社長の同級生だという、この間診て貰った医者が現れる。
莉子の点滴パックがほぼ終わっていることを確認して針を抜いてくれた。