おためしシンデレラ
三村の腕に力がはいる。
帰ってきたかった。
独りで大丈夫なんて強がってみても、本当は不安でしかたなかった。
この腕に縋ってもいいのだろうか。
この腕の中で守られて生きてもいいのだろうか。
「莉子」
名前を呼ばれて切なさで心が引き絞られる。
莉子が三村にしがみついた。
「好き・・・・・です・・・・・!好きなんです・・・・・迷惑にしかならへんと思って・・・・・言えなくて・・・・・」
三村が莉子の髪を梳くように撫でる。
「約束してたし川床に鱧、食いに行こうな」
莉子が頷く。
三村が莉子を自分から少し離し、涙でぐしゃぐしゃの顔を見て満足そうに笑った。
「お前、実は手がかかる生き物やったんやな」
そう言うと触れるだけのキス。
何度も、何度も。
喜びが身体中に満ちて、
幸せが心から溢れて、
温かい腕に守られて、
莉子はようやく安心して笑った。