おためしシンデレラ


「良くやった、穂村!」

目の前にはご機嫌な会長。

あの日、慌てて出て行った和生はちゃんと豆田くんを捕まえて帰ってきた。

「嫁さんと子供が一気にできたぞ、しかも相手はしっかり者の豆田さんだ。息子ながらベストチョイスやな」


そうですね、和生の今までの女性遍歴を考えれば豆田くんは最高だ。



ミッションコンプリート。



やれやれだ。



久しぶりに定時に家に帰ると、環が生まれたばかりの子供を抱いて玄関まで出迎えてくれた。


「和生くん、莉子ちゃんと結婚するんですってね。良かったわ」


「あれ、情報が早いな。もう聞いた?」


返事の代わりに環がニッコリする。


何故か胸騒ぎ。


「和生くんから電話貰ったの。色々頑張ったんやってねぇ、真歩ちゃんを和生くんの結婚相手だとか莉子ちゃんに誤解させたり、わざわざ和生くんのマンションの下の階の部屋に住まわせて行き帰り一緒にさせたり」

「噂になったら面白いし、そしたら和生も豆田くんに誤解を解くために話もするやろ」

「面白いーーーねぇ。当人達は大変やったっていうのに」


そう言って彼女がスマホの画面をこちらに向けた。


「和生くんが色々世話になった礼だって」

そこには例のクラブでの写真。


やられた。


どうやら2人に内緒で裏で動いていたことがバレたらしい。


「さ、色々説明してもらいましょか」




奥様に夜半過ぎまでこってり絞られて、ハイブランドのバッグまで買わされることになってしまったのはあの2人には死んでも内緒にしておこう。

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