おためしシンデレラ
「いいか穂村、秘書は男か、オレに結婚だとかしょうもない期待をしないような枯れた女にしろ」
うわーーー・・・・・っ。
言い切りよった。
枯れた女とか。
結婚はしょうもないとか。
次の秘書は大変だなとヒトゴトみたいにあの時の莉子は思っていた。
3年後。
7時半に出勤した莉子は自分のデスクの一番下の引き出しにバッグを勢いよくほりこみ、掃除道具を手に社長室のドアを開ける。
机の上に置かれた書類を整理して、経済新聞、大手新聞、スポーツ新聞を順番違わず並べていく。あの男はこういうことにやたら煩い。
デスクの引き出しを開ければ、キチンと整理整頓された文房具類。足りないものは補充しておかないとこれまた機嫌が悪い。
ソファーやテーブルを拭きあげて、隣の自分の部屋に戻り、コーヒーをセットする。
出勤してきたときに、おはようございますの挨拶とともにコーヒーの香りが出迎えるのがもう何年もデフォルトだ。