おためしシンデレラ
気が付けば三村のSUV車の助手席に放り込まれホテルを後にしていた。
慣れた様子でハンドルを捌く三村を莉子は横目で睨みながらこれみよがしに大きな溜息をつく。
「・・・・・なんや?鬱陶しいな」
鬱陶しい・・・・・・・・・・?
莉子の中で何かがパチンと音を立てて切れた。
「溜息もつきたくなるでしょうよ!折角常務がセッティングしてくれはったお見合いやのに!なんで社長が断るんですか!!」
「阿呆!どっかの誰かが『1億総活躍社会』て言うてたやろうが!仕事辞めて家庭に入ってくれなんて時代遅れもええとこや!」
「どっちが時代遅れですか。今、女子大生に専業主婦って超人気なんですから!」
三村は聞こえないフリをする。
別に莉子は専業主婦になりたい訳では無い。結婚したって子供ができるまでは働こうと思っているし、相手の収入によってはずっと働くことだって嫌じゃない。ケースバイケースだ。
少し話しただけだったけれど、さっきの彼はいい人だった。