おためしシンデレラ
けれど謝るべきは三村であって、莉子には非はない。
足音がする。
ムカついていても気分が悪くてもその音を耳が拾う。
やがて何食わぬ顔で三村が入ってきた。
「おはようさん」
「おはようございます」
デスクにつき、莉子が淹れたコーヒーを当たり前のように飲む男。昨日のことは無かったことのように新聞を手に取る。
「マメ、タイの工場誘致の報告書は?」
「そこにあるファイルです」
「先月のアジア地区の売上データ」
「お昼までにメールで届けるように関係部署に言ってあります。夜はS商事の金田会長との会食が入ってます」
三村が新聞から目を上げ、ふっと口角を上げた。
「そういうとこだ、マメ」
「は?」
「聞けば欲しい答えが必ず返ってくる。オレの先回りをして段取りができる」
「ーーーそう社長に教育されましたから」
「教育してもできない奴が多いのにお前は難なくこなす」
「難はありますけど・・・・・」