おためしシンデレラ
「またお前みたいな秘書を手に入れるのは大変だ。だからオレはお前を手放せない」
「・・・・・・・・・・え・・・・・」
「オレが社長でいる限り、秘書はお前がええ。だからしょうもない男にはやれん」
「なんか・・・・・愛の告白を聞いてるみたいです」
三村が可笑しそうに笑う。
三村なりに昨日のことを謝っているのだろうか?
狡い男。
三村が会議の間に、莉子は社内のクリニックへ足を運んだ。会議中は課長の穂村がつくので莉子の手が空く。
朝の内に予約の電話を入れておいたのですぐに診察室に通された。
「莉子ちゃん、いつものか?」
白髪初老の医師が優しい声で尋ねてくれる。
「そうなんです、真野先生。鎮痛剤ください」
「毎月難儀やなあ」
カルテに書き込み、椅子を回転させて真野が莉子に身体を向けた。
真野は見た目通りの穏やかな医師だ。どこかの離島の医師を辞めた後、このクリニックを開いたらしい。
「健康優良児のわたしもこれだけは敵いません」
「子供産んだら楽になるで。28やろ、そろそろそんな話があってもええやろ」