おためしシンデレラ
三村がソファーからスーツのジャケットを取り上げ腕を通す。
まさか自分に掛けられていたーーーー?
莉子の身体から温度がなくなっていく。
「酷いのか?」
「・・・・・・・・・・へ?」
てっきり怒鳴られると思っていたら思いがけず声音が平坦で間抜けな返答をしてしまった。
「朝から顔色が悪かった。男にはよく分からんあれやろ」
「・・・・・・・・・・はあ。気付いてはったんですか・・・・・」
言われて莉子が少し眼を丸くする。
「親よりも長い時間一緒にいてるのに気付かんわけないやろ」
「その気遣いが新鮮過ぎて吃驚です・・・・・」
三村の秘書になって3年。
体調を気遣われたのは初めてかもしれない。
「対症療法しかないのか?」
「はあ、まあ・・・・・治す方法もないこともないんですが・・・・・」
「なんだ?」
莉子が少しの間返事を逡巡した。
三村が早く言えとばかりに眼で促す。
「・・・・・妊娠すれば治るってクリニックの真野先生が」
「はーーー・・・・・それで見合いか」