おためしシンデレラ
「でいつから同居?」
「・・・・・・・・・・今晩、荷物もあるしウチに迎えに来てくれはるらしいです」
「それはまた仕事の早い・・・・・」
呆れた声で呟く環の、生暖かい笑みには全く気付かない莉子だった。
出来れば回避したい。
というか全く同居したくない。
莉子は唯々諾々と承知したわけではないし目いっぱい抵抗した。
けれど莉子の抵抗ごとき、三村にとっては煩い蚊を追い払う程度のものだったらしい。
「オレはかまへんぞ。お前は今まで通り仕事をしたらええ。ただ結婚退職も部署替えの望みも聞かん。それが嫌ならオレを納得させてみろ」
コンプライアンスとかパワハラとかワガママだとか色んな言葉が頭に浮かぶのに、三村の黒い笑みを見るとみるみる気持ちが萎んでいく。
百戦錬磨のキレる経営者に言い勝つ気がしないのだ。
嫌々、承知したのだった。
環の家から自分のマンションに戻り、荷物を詰めたキャリーバッグを玄関まで運んでおく。