おためしシンデレラ
足りないものがあればその都度取りに戻ればいいと最低限のものしか入れていない。
結婚した後、仕事を続ける女性がどんなに大変かあのオレ様に思い知らせてやる。
そんなことをつらつらと考えていたら、通勤用のバッグの中でスマホがジョーズのテーマを奏で始めた。
もちろん莉子が対三村用に設定した着信音だ。
「はい、豆田です」
『オレだ。今マンションの前に車をつけた。荷物は自分で持っておりられるか?』
「大丈夫です。5分で行きます」
素早くマンションの火の元をもう一度確認し、鍵をかけてエレベーターへ乗り込む。
マンションのエントランスに降り立つと、黒いSUV車に寄りかかり、スマホを弄る三村。
白シャツに黒のカーディガンをはおり、デニムをはいたフツーの格好なのに、歩道を歩く人たちがチラチラ視線を投げる。
無駄にオトコマエを垂れ流してんなー・・・・・莉子がちょっとの間見ているとスマホから顔を上げた三村と目が合った。
「マメ!」
周りの人が声をかけられたわたしに注意を向け、おや?という表情をする。