おためしシンデレラ
「賢明ねえ・・・・・」
思わずという体で三村が小さく笑う。
最上階に着いて三村が降りる後をちょこちょことついて歩く。そういえば莉子のキャリーバッグはずっと三村が持ってくれていた。こういうところは自然と身に付いたものなのか。
東京の有名私立大を卒業してアメリカに留学。本社こそ京都だが有名企業の御曹司。口は悪いけれど育ちの良さは見て取れる。
つらつらと考えていたら部屋の鍵を開けて三村が莉子に入れとばかりにドアを押さえて待ってくれていた。
玄関に入って息を呑む。
沓脱ぎは大理石、広さは莉子が住むワンルームマンションくらいありそうだ。
ダークブラウンのシューズクローゼットの扉を開けて三村がスリッパを出してくれた。
「お前の靴は空いてるところに適当においてかまへんから」
廊下を歩いて玄関に一番近い右手の部屋のドアを開けて三村が莉子のキャリーバッグを入れた。
「この部屋を好きに使え。一応、布団だけ用意しといた。足りないものがあったら遠慮なく言えよ」