おためしシンデレラ
秘書の説諭
疲れる。
三村と同居を始めてから莉子の睡眠時間は最低でも30分は減った。分担しているてはいえ、2人分の家事は少し負担だ。
無駄に家も広いし。
今日の午前中は三村はタイに建設する工場のことで社内会議に出席している。確か会議を取り仕切るのは国際部で唯一の女性主任である市ノ瀬だったか。
内線電話が鳴る。
「はい、社長室秘書豆田でございます」
「あ、豆田くん?」
受話器の向こうから聞こえてきたのは穂村の少し焦った声。
さては社長がヘソでも曲げたか・・・・・?
聞き慣れた足音が近付いてくる。
一通り穂村の話を聞いて受話器を置くのと莉子がいる部屋のドアが乱暴に開けられるのと同時だった。
三村が莉子の方を見向きもせずに社長室に入って行く。
ああ、これは随分とご機嫌ナナメやわ。
時計を見ると会議に出ると部屋を出て行ってから30分ほどしかたっていない。
莉子は立ち上がりコーヒーを入れようとして思い直し電気ポットのスイッチを入れた。