おためしシンデレラ
社長室を出て、隣の部屋の自分のデスクに戻る。
あれが三村から贈られる最大限の賛辞。
今でこそ何でも無難にこなせるようになったけれど、最初のうちは何度も怒鳴られた。
自分にも厳しい莉子の上司は秘書にも容赦ない。
けれど理不尽に怒られることはないし、一度怒鳴ってしまえばその後引きずらない、割に気性のサッパリした上司だ。
今朝も完璧に整えられたデスク。
どこで判断しているのか軽い胃もたれまで言い当てる。
年頃の女の子をマメって呼ぶのはどうやろかと難色をしめしたのは穂村だったか。
コロコロと転がりそうな小さな丸い身体、ぴったりやないかと三村は思っている。
打てば響く賢さも、2度と同じミスをしない慎重さも、気働きができるところも割と気に入っている。
本人は卑下しているけれど、外見も可愛い部類だろう。
豆ダヌキみたいで。
恐らく、秘書というものが傍につきだしてから一番優秀な人材だ。
女の部分をあからさまに押し出して、こちらの迷惑にしかならない厚かましさもないし。
掘り出し物の秘書だったなと三村は口元を緩めた。