おためしシンデレラ
三村のは生ハムとクリームチーズだ。
「お前、今日の予定は?」
「いい加減になっている掃除をして食料品の買い物に行きます。社長はどうぞデートでも何でもお出かけください」
三村がコーヒーカップを持ち上げる手を止めた。
「・・・・・世の中の嫁さんは休日にダンナに浮気を推奨するのか?」
「しませんよ。でもわたしたちはニセモノですから」
「ニセモノでも何でも1ヵ月は結婚生活ってヤツをするんだろうが。ちゃんと休日のダンナの仕事を割り振れ」
莉子がベーグルサンドに齧りつこうとした口を開けたまま三村を凝視する。
「なんや?」
「意外と真面目で驚きました」
我に返った莉子が答えた。
三村の眉間が僅かに顰められる。
「・・・・・お前、ちょっとこっち来い」
しまった。
怒らせたか。
莉子が素直に席を立ち、向かい側に座る三村の傍まで行くと、あっという間に腰を取られた。
何故だかストンと三村の膝に乗せられる。
「・・・・・・・・・・社長」
三村が莉子が食べようとしていたベーグルを手に持ち口の前に持ってきた。