おためしシンデレラ
何か言い返そうとしたけれど言葉が上手く出て来ず、身体が火照るばかりだ。三村の言う通りこの歳まで男性との至近距離の接触はなかった。だから処女だった訳で・・・・・。
莉子はまるで敵のようにベーグルサンドにかぶりつく。目の前には新聞を読みながらコーヒーを飲む三村。
眼福だなあとは思う。
見ている分にはその性格の面倒くささも分からないし。
この男の隣に立とうと思うのは絶対に自分に自信がある女だ。
どんな嫁を貰うのだろうかと少し楽しみだ。
食事を終え、それぞれ担当の場所の掃除をする。もともと几帳面な面を持つ三村は掃除も思ったより上手で三村の部屋もバスルームも莉子が同居を始めてからずっと清潔に保たれている。
お坊ちゃまのクセに。
莉子がつま先立ちで洗ったお皿を食器棚に戻そうとしていると、後ろからすっと手を添えられ高い位置に難なく仕舞われた。
「チビは大変やな」
「あ、ありがとうございます」
「それで終わりやろ、出掛ける準備しろ」