おためしシンデレラ
1階に着くと真っ直ぐにコンシェルジュの小林さんのところへ向かう。
実を言うと莉子は小林さんが少し苦手だ。腰も低いし言葉遣いも丁寧、上品な女性だとは思うのだがどこか莉子に冷たい気がするからだ。
「クリーニングですね、畏まりました。恐らくできあがりは明後日になります」
小林さんの慇懃無礼ないつも通りの対応。
どうせ一月だけの付き合いだしと割り切ってはいるものの、あまり気分の良いものではない。
地下に行くためまたエレベーターに乗ると、少し様子のおかしい莉子に三村が気付いたらしく頬を引っ張られた。
「ひゃにひゅるんれすか」
はるか上にある三村の顔を莉子が見上げる。
「何面白い顔してる。なんか気になんのか」
「・・・・・社長の隣にいるとなんだか女性に嫌われるなあと」
「何やそれ」
「おモテになってええですねってことですよ」
小林の態度はイマイチ不可解だけれど、好かれてはいないことは確かだ。
「オトコマエは辛いなあ」
そう言って笑う三村を横目で見つつ、莉子はそっと溜息を一つ落とした。