おためしシンデレラ


買い物だけのつもりだった莉子だったが三村はそうではなかったらしい。

車は軽快に高速道路を走る。

サングラスをかけた三村の表情は少し判りづらいが機嫌は良さそうだ。会話はそれほどないけれど居心地が悪い訳ではない。

どこに連れて行かれるのか、少し楽しみだとさえ思う。

こんな風に男性と2人で出掛けたことも片手で数えられるほどの経験しか莉子にはない。

不思議と緊張しないのは三村だからか?

「マメ、おとなしいな」

「仕事の話でもしましょうか?」

「なんでや、なんかもうちょい艶っぽい話しろ」

「艶っぽいって・・・・・恋愛関係やないのに無理でしょう」

「確かに」

三村が軽やかに笑い声をあげた。

莉子はさっき見上げた道路標識から行き先は神戸方面だと推測する。

定番デートコースだな。
多分恋愛経験値が低い莉子のために。
ふっと口元が緩んだ。

このオレ様でもそんな気遣いをするんだと妙に安心する。

傍若無人なオレ様のようで、偶に優しい面を見せる。会社の玉の輿を狙っている女の子たちに教えたら益々熱が上がるんじゃないだろうか。
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