おためしシンデレラ


「人のことより自分はどうなんだ。付き合ってるヤツはいるのか?」

「いてませんよ。社長がなんだかわたしの男性観をことごとく覆してくれはるんで軽く男性不信です」

「どんな男性観だ?」

「ひとりの女性だけを大事に慈しんで、いつでも優しい言葉をかけてくれて、愛されていることを実感させてくれる・・・・・とか?」

「なんやそれ。辞書を引いてみろ、男はみんな浮気者の快楽主義者って書いてあるぞ」

「どこの辞書ですか、それ。破って捨ててください。間違ってます」

「オレ様辞書だ」

「燃やしてください」

ぶっと三村が吹き出し、それが朗らかな笑い声に変わる。

莉子は驚くと同時にその三村の子供のような笑顔にしばし見蕩れた。



そんな無防備な顔もできるんだ。



はっと我にかえり、目線を下げ、仕事の続きに気持ちを向ける。

三村が社長室に戻ろうと身体の向きを変えた。

「あ、社長、3時にクリニックの予約が取れたので行ってください」
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