潮風とともに
彼の部屋を出て、徒歩15分。
隣駅にある自分の家に着いた途端、
何故かどっと疲れが押し寄せた。
誠実だった彼が、いつから浮気していたのか……
ぼーっとしていると、時刻は21時をさしていた。
手元にあったスマホから着信音が流れてきて、見やるとそこには会いたくもない、彼の名前が写し出されていた。
震える手をどうにか動かしながらスマホを耳にあてると、
「瑠碧?仕事、終わった???
何時ごろ来れそう??」
そういつもの優しい声で言う彼
私が何も知らないとでも思っているのだろう。
今日は明日から土日を挟んで1週間休みを取っていたこともあり、仕事終わりで泊まりに行くと伝えていた。
それなのに、彼は他の女を、いつ彼女がくるかも分からないにもかかわらずに招き入れ、
7年間私と一緒に使っていたベッドで他の女を抱いていた。
何も声をはっせない私を不思議に思ったのか、電話口で何度も彼が私を呼ぶ。
「聞こえてるよ。聞こえてる。
今家にいるの。
剛、さっき何してたの……。」
私の言葉で剛が息を飲むのが分かった。
「っちがっ!!!
瑠碧、うちに来てたんか?」