潮風とともに
幸せのかたち
翌日、私は朝一番で彩花さんに退職願いを出した。
一瞬目を見開いて固まった彩花さんに申し訳なくなり頭を下げると、フーッとため息が聞こえて肩を叩かれた。
「瑠碧、顔あげなさい。
あなたの今の状態を見たら旦那さんと一緒に沖縄に行く方があなたの為なんでしょうね。
本当は反対よ。あなたはうちのエースだからね。
でも女の幸せはやっぱり愛する人の傍にいることだと分かるから。あっちでも頑張りなさい。」
そういって綺麗な微笑みを浮かべた彩花さんが手を差しのべてくれたので、その手をそっと両手で握った。
「彩花さん、本当に、本当にありがとうございました。
私、ここでたくさんの幸せのお手伝いができて幸せでした。でも、これからは自分の幸せを掴みにいってきます!」
「たまには遊びに来なさいね。」
私は彩花さんにもう一度深く頭をさげ、デスクを片付けると、オフィスを後にした。
ここで学んだことは本当に数えきれないほどあった。
たくさんの幸せをみてきて、
時には悩み、壁にぶちあたって泣いたこともある。
それでも辞めずにここまでこれたのは、彩花さんをはじめとした仲間たちがいたから。
私はここで学んだことをアダンで活かしていきたい。
まだ今はまだ働けるのか分からないけど、きっと素敵なブライダル部門にしてみせる。
傍には波瑠がいて、弘人さんも美穂もいるから何も怖いことはない。
私はロビーを出てからもう一度ビルを見上げ、オフィスに向かって頭をさげた。