潮風とともに
「波瑠?大丈夫だよ。今日はずーっと楽しみにしてた披露宴だもん。赤ちゃんだって、ちゃんとわかっててくれるはず。お腹の赤ちゃんが私がいるから無理しないでねって教えてくれたのかもしれないね。」
お腹に手をあてて、まだ全く膨らんでもいないお腹をさすると、心まで暖かくなった。
そっと私の手の上に波瑠の手が重なる。
「そうだな。今日のは思いきり楽しもう。
明日、二人で病院いこうな。
前の事もあるから、ちゃんと見てもらって大事に大事に二人で育てような。」
波瑠の優しくて暖かい眼差しに涙がうかぶ。
「っうん!今度こそ、守るからねっっっ。」
波瑠の大きな手をギュッと握ると、もう一方の手で更にきつく握り返してくれた。
その後、無事に披露宴も終わり、
笑顔が溢れる一日を過ごすことができた。
翌日、二人で産婦人科に行くと、待合室にはお腹の大きなママもいれば、まだ膨らんでいないママもいて、その人たちを見ると自分もここの仲間入りができているのという緊張と、不安に押し潰されそうになる。
二人ならんでソファーに座り呼ばれるのを待つ。
「瑠碧、赤ちゃんきっといるよ。そんなに不安な顔をするな。大丈夫。」
そっと膝に置かれた私の手を波瑠の暖かくて大きな手に包まれる。
「うん。大丈夫。」
きっと大丈夫。
「赤嶺さーん。赤嶺瑠碧さん、どうぞー。」
看護士に呼ばれて診察室へと向かった。