潮風とともに
「いくら大声でいわれても、無理なものは無理。
明日の結婚式の打ち合わせもキャンセルしておくし。
明後日からの沖縄もキャンセルしておく。
また実家に挨拶に行くときに連絡して。
さよなら。剛。」
私は呆然としている剛をおいて、
席をたった。
隣にいた家族づれと目があって
気まずそうに目を剃らされた。
ファミレスを出ると、深い溜め息がこぼれる。
短大に入学してからすぐに付き合い初めて、半年前に7年記念日を迎えた。その時に、剛からプロポーズされて、
先月、剛の御両親に強く言われたのもあってホテルでの結納を交わしたばかりだった。
お互いに恋愛や付き合うといったことが初めてだったから、当たり前のように、キスもセックスも初めての相手で……
だからなのか、
結婚前にちがう女とヤりたくなったのかもしれない。
だとしても、この冷えた気持ちはもう元には戻らないだろうな。
そんなことを考えていると、ポツリポツリと雨が降ってきたと思ったら、急に雨足が強くなり、大雨になった。
行き交う人は走り出したり、傘を指したりするなか、
私は頭からずぶ濡れになったまま、歩きつづけた。