潮風とともに


トントン

「瑠碧?どうした?」


フロントの方を見たままの私を不信に思ったのか、心配そうな顔で覗きこむ美穂の顔が目の前にきて、
驚いた私は一歩下がった。


「いや、何でもない。ただライバルがいただけ。」

私がぼそりと言うと、首をかしげた美穂は歩きながら聞いてきた。

「ライバル?」

「そ、ライバル。フロントの弘人んの隣にいた人。
多分波瑠狙いなんやろね。」


そう、あれは間違いなく波瑠狙いだ。


私が見つめ返しても逸らすことがなかったから。


あんな美人が……って思うけど、

それは仕方のないこと。


波瑠はイケメンだから間違いなくモテる。


無愛想で女に興味がないし、誰も近寄れない雰囲気を出しているけど、

それでもその無愛想な所がいいと言う人がたくさんいるはず。


私だってそのうちの一人。


顔だけじゃない、波瑠の中身を知ればもっと波瑠はモテると思う。


気が気じゃないけど、あんな美人に嫉妬したところで、
どうにもならないことも分かってる。


私はただただ波瑠を信じるのみ。


波瑠が私を大事にしてくれて、愛してくれているという事を、私自身が大事にするだけ。
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